まちぶら部

【まちの魅力発見レポート】Vol.2-2下北沢 なぜ下北沢が若者に愛されるのか-若者の分析編‐

皆様、こんにちは。まちぶら部研究員の大澤です。本日は下北沢の街に集まる若者をレポートします。前回のレポートでは、様々なジャンルが集まる下北沢の街「宝探しのような街である」とご紹介しました。

※詳細は前回の記事をご参照くださいhttps://flight-room.com/article/1808/

今回は、下北沢に集まる若者にフォーカスし「なぜ若者に下北沢が愛されるのか」を考察したいと思います。

※若者=18歳~25歳大学生と仮定します。

 

●愛される要素:「安い!!」

当たり前だろとお思いかもしれません。経済活動を行う上で「安い」という要素は、日本人はもちろん全人類にとって重要になるのは明らかですが、ことさら若者にとって、「安さ」というのは物事を決定するにあたる大切な要素になります。

基本的に若者はお金がありません。大学に通いながら、バイトや家庭からの援助を元に生活を行っています。日本学生支援機構(JASSO)の2018年調査によると大学生の平均月収は自宅生アルバイトで36,570円、アパートなどの下宿生アルバイトは30,850円となっており娯楽などに使える金額は限られています。

 


▲JSSO平30年度学生生活調査結果より

「大学生(昼間部)居住形態別・収入平均額および学生生活費の内訳」から

月平均を算出

 

月平均3万7千円という限られた費用をやりくりして自分の満足する交友や娯楽に充てる大学生が多いという事ですから、お金の使い方は自然とシビアになってきます。学生にとって「安さ」が重要であること必然なのです。

もちろん、ここでいう安さというのは「ただただ安い」ということではありません。「街が提供する価値>自分の持っている価値基準」の不等号において「街の持っている価値」が高いという事=「安い」ということです。下北沢は「価値の高いことを安く楽しめる!」という街であり、そこが若者をつかんで離さない特徴になっていると考えられます。

 

下記からは、何が安く、何が学生を魅了しているかを考察しました。

 

●学生に愛される価値=ファッションが安く楽しめる

下北沢で「ファッション」と言えば「古着」を思い浮かべるのではないでしょうか。下北沢では、古着によりファッションが安く楽しめるだけではなく、現在では「古着により流行に沿ったスタイル」を楽しむことができるのが魅力になっています。

2017年頃からビックシルエットのファッションが主流となり「リラックススタイル」や「ルーズスタイル」といった太めのスラックスに、ワンサイズ大きなオープンカラーシャツ、肩を落としたサイズ感のTシャツを着用したスタイルが流行します。元々アメリカやヨーロッパの古着は日本よりもサイズが大きく、日本人に合った”ゴールデンサイズ”と呼ばれるものは流通数が少なく、高値になりがちでした。しかし、ビックシルエットが流行することで今まで「大きい」とされてきた古着がゴールデンサイズとなり、需要が広がったことで「古着」が一気にファッションのメインストリームの一部となったのです。また、古着はよく「1点もの」など言われ「個性を主張するアイテム」としても活用されます。リーズナブルな値段で個性を主張できると言うことで、違いや個性を表現したい若者が古着を求めて下北沢に集まるようになったのではないでしょうか。

古臭くなく、流行を安く仕入れ、かつ個性を表現することができる古着の文化が、現在の下北沢人気に拍車をかけているのでしょう。

  

▲2020年3月コロナ前 賑わう下北沢          ▲2020年11月東洋百貨店前

 

 

●下北沢の価値=おいしいご飯を安く楽しめる

下北沢のご飯屋さんを一言で表すと正に「玉石混淆。味の定まったチェーン店から、尖ったコンセプトの飯屋、カレー激戦区、老舗の名店等、様々なご飯屋さんが軒を連ねています。一度や二度街を訪れて「○○を食べておけば間違いない」などという言葉では覆いきれないのが「下北沢の食事事情」です。言うなれば訪れる人、ひとり一人にあった名店があるのが下北沢です。

さらに、下北沢のごはんは安いです。ただ安くて質が悪いのではなく、上記のように拘りぬいたお店がおいしいご飯を提供しているところがほとんどです。下北沢の「食べログランキング」を確認すると1位~10位の店に関して夜も2000円台で飲食できるようなお店が数多くあり、仲間内でワイワイ楽しめる大衆的な雰囲気を漂わせています。ひとりフラッと下北沢に寄ったとしても、どこかに入れば、おいしいご飯に安くありつける、学生たちにとってこれほど良い環境はありません。少し、足りないのであれば駅前で「ワン缶」して帰ればいいのです。

 

  

▲2019年7月下北沢駅前の”ワン缶”する若者  ▲2021年7月下北沢駅前のワン缶する若者

※「ワン缶」とはコンビニでお酒を1缶だけ買って友人同士路上で飲む行為のことを言います。2020年新型コロナウィルス感染拡大前から学生の間では普通にされており、21年現在は20時以降店舗が閉店してしまうため、下北沢では「ワン缶」が宴会へと拍車がかかっています。

※新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から”ワン缶”を推奨するわけではありません。

 

学生にとって、仲間同士で魅力的なお店で安くご飯が食べることができ、お酒が飲めて、少し足りなければ駅前に集まれる広場がある環境の下北沢はまさに天国ではないでしょうか。

 

▲2020年11月 行列のできるカレー屋 Mikazuki curry samurai

下北沢には、多数の行列ができる店が700m圏内に点在している。

 

●魅力的で価値ある様々な出来事を体験できる

冒頭でも申し上げた通り「街が提供する価値>自分の持っている価値基準」の不等号で「提供される価値が高い時」にお金を払います。下北沢には上記の安くファッションを楽しめる・安くおいしい食事を楽しめるというだけではなく「劇場で楽しむ演劇」「レコードショップなどで音楽を楽しむ」「古本屋で好きな本を買う」「軽食を食べ歩きする」「ダーツやビリヤード、ゲームなどのアミューズメントを楽しむ」という事が2km圏内もしくは北沢2丁目の700m圏内という狭い範囲ですべて楽しむことができるのです。

若者にとって、見たこともない価値の高い様々な体験を“安く”経験することができるため、下北沢は若者に愛されるのでしょう。