価値リノベーション研究

【Vol.3】若者でも「写ルンです」は懐かしい!

なぜ今、「写ルンです」が若者に人気なのか?

その要因をVol.2の記事で検討しましたが、今回は、“ノスタルジア感情”に注目し、アンケート調査をした結果をご紹介いたします。

ノスタルジア感情の分類については、Vol.1の記事で触れていますが、「個人的ノスタルジア(personal nostalgia)」と「歴史的ノスタルジア(historical nostalgia)」に大別されます。前者は個人的な過去の経験に基づく感情ですが、後者は、記憶がないにも関わらず、自分自身が生まれる以前の古き良き時代の歴史的物事や人物に対して生じる懐古感情でした。

では、今「写ルンです」を利用している若者に、懐古感情はあるのでしょうか?

 

●「写ルンです」流行当時を知らない若者も歴史的ノスタルジア感情がある!

「写ルンです」で撮影した写真をSNSに投稿したことがある20代以下男女600名に対し、「写ルンです」で撮影した写真がSNS上にアップされているのを見ると、あなたはどのような気持ちになりますか?という質問をした結果、「どこかなつかしい感じがする」に対し、約72%がそう思うと回答しておりました。(下記図参照)

 

 

ここで注目すべきは、「写ルンです」が流行している当時を知らない世代でも、ノスタルジア感情を抱いているということです。

どうしてなつかしさを感じるのか?その理由を聞くと、以下のような記述回答が見られました。若者ならではの視点から、「写ルンです」で撮影される写真に特別な感情を抱いていることが窺えます。

 

デジタルカメラやケータイのカメラと違って失敗した写真も画像になってしまう。それが面白い。

今はケータイにたくさん入っていて変な写真などない!のちのちみるとつまんないと思う。(女性 26歳)

 

現代は加工などのレベルが上がりすぎて実物と全然違くなってしまったりしていてやりすぎだなと思うから。(女性 22歳)

 

今の時代はすごく綺麗な写真が携帯で撮れるようになっているので、写ルンですのような昔からあるものを使うことによって一味違う写真になるから、写真を見たときに普通の写真と感じるものが違う。(女性 17歳)

 

最新アプリでは出せないフィルターの味がよい。(女性 18歳)

 

現像した写真が、夢に出てくるような雰囲気の写真だから。(女性 15歳)

 

今はケータイできれいな写真も撮れるし、失敗したら削除もできて便利なものの、現像するまでどんな写真がとれたかわからない楽しみがなくなってしまったのは味気ない気がするから。単純に懐かしいなと思う。(女性 28歳)

 

時代の進歩する速度が速すぎて、昔にタイムスリップしたいと思うことがあるから。(男性 18歳)

 

いかがでしょうか。

堀内(2007)によると、ノスタルジアを感じやすい刺激パターンとして、写真をセピア色にする、モノクロにする、夕日を強調する等があり、現在と過去の対比を意識させるような共通の法則が背後にひとつ存在しているのだろうと指摘しています。「写ルンです」で撮った写真は、“夢に出てくるような雰囲気の写真”と記述回答にもあったように、ノスタルジアを感じやすい刺激パターンと似通った風合いでしょう。また、それに加え、その写真がSNS上というデジタル化された状態で、綺麗な写真と混ざった中で投稿されていることにより、新旧対比が適えられているとも言えるでしょう。

 

デジタル技術がますます進化していく現代、若者にとって高画質で綺麗な写真が撮れることは当たり前となっています。スマートフォン上では、写真アプリも充実しており、自分の思い通りの加工もしやすくなりました。加工のレベルが上がりすぎ…といった回答もありましたが、目まぐるしく変化していく現代にいる若者だからこそ、自然にありのままを映し出す「写ルンです」の写真は一味違ったものとしてホッとするような懐古感情を抱いているかもしれませんね。

 

次回は、「写ルンです」を使用することの“新奇性”について検討していきます。
是非ご覧ください。

 

調査概要
1.調査時期 :2018年11月
2.調査方法 :インターネット調査
  ※株式会社クロス・マーケティングのWebアンケートモニターを使用して実施。
3.調査対象 :調査対象者:女性484名、男性116名の合計600名(平均23.85歳、SD=3.94)
  ※スクリーニング条件として、①15~29歳、②「写ルンです」で撮影した写真をSNSに投稿したことがある、③手抜き回答のチェック、の3つを設けております。

 

※参考論文

堀内圭子(2007) 「消費者のノスタルジア」『成城文藝』Vol.201, 179-198.

※本稿の一部は、「若者のレトロ商品における利用動機に関する研究 ─使い捨てフィルムカメラを対象としたノスタルジアと新奇性からの検討─」として、日本プロモーショナル・マーケティング学会の平成30年度研究助成を賜り実施した内容となり、学会賞に選出されました。

論文集『プロモーショナルマーケティング研究』Vol.12に掲載されております。
※本研究は、武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所客員研究員である水師 裕 さんとの共同研究となります。