まちぶら部

【まちの魅力発見レポート】Vol.2下北沢 なぜ下北沢が若者に愛されるのか-街の分析編‐

 

 

皆様、こんにちは。まちぶら部研究員の大澤です。本日は下北沢の街をレポートします。おそらく、こちらのページをご覧になっている皆様は「下北沢」をご存知の方が多いかと思いますが、今回は下北沢の街を分析するとともに「なぜ若者に愛され続けるのか」という事を紐解きたいと思います。本記事は、下北沢を愛する私、大澤が独断と偏見により記載させていただいてますので、ご注意ください。

はじめに「下北沢って何?」とか「下北沢とはどこか」という「下北沢の定義」を決めさせていただきます。結論から申し上げますと「下北沢」は地区の名前ではなく駅名となるため、地域として明確化はされていません。しかし、主に下北沢と呼ばれているのは、鎌倉通りと茶沢通りに挟まれた6商店街を含む「駅周辺の北沢2丁目を中心とした街並み(北沢2丁目・北沢3丁目・代沢5丁目)」を指すことが多いです。今回は上記を下北沢と仮定し、記述します。

●演劇、芸術、本、古着、居酒屋など・・・文化に愛される日本屈指の街

※2019年タイムアウトが選ぶ「世界で最もクールな街」第2位

 

「下北沢」と言われて、皆様は何を思い浮かべますでしょうか。そう質問すると恐らく下記のようなことを思い浮かべるのではないでしょうか。「本多劇場をはじめとした大小様々な劇場がある、路地にところせましと服屋や雑貨屋が存在している、カレーがおいしい、こだわり深い個人店舗がたくさんある、ラブハウスが多くバンドマン達の聖地、なんかゴチャゴチャしている、サブカルが下北沢だ」などなどです。そのどれもが下北沢を表していると言えるのではないでしょうか。

「下北沢=○○」というような一言で表せる強力な言葉はありません。強力な固有名詞が下北沢にはありません。ないというよりも、ありすぎるために固有名詞がつけられないのです。それらを総称して「サブカル」と言ってもいいのですが、果たして「サブカル」は正解なのでしょうか。「思い浮かべるすべてが正解であり・あなたが思い浮かべるほとんどが下北沢にある。」そう言っても過言ではないのが下北沢ではないでしょうか。

 

 

そんな下北沢はタイムアウト(1)が選ぶ「世界で最もクールな街第2位」に選ばれました。受賞理由は下記のように語られています。

 

同調査は、世界の2万7千人以上の都市生活者に、各都市のフードシーンの充実度、文化的多様さ、フレンドリー度、財布事情、幸福度、住みやすさなどを尋ねたもの。その結果をもとに、さらに専門家たち(タイムアウトエディターと各地の事情に詳しいエキスパート)に意見を求め、各都市のなかで最も話題性の高い街を特定させたのが、このランキングだ。

 

下北沢が評価された理由としては、「下北沢はニューヨークにとってのブルックリンのようなものだが、唯一の異なるのはもっとイカしていること。渋谷や新宿など都心の近隣地区と比べて商業開発が進んでいない下北沢は、流行に敏感な雰囲気や、アンダーグラウンドな格好良さを持つカウンターカルチャーのレガシー、多くのストリートクレド(街の若者たちからの信頼)であふれている。

出典:タイムアウト※(1)https://www.timeout.jp/tokyo/ja/travel/coolest-neighbourhoods-in-the-world

 

どうやら下北沢はニューヨークのブルックリンよりイカしているようです。ブルックリンと言えばノートリアスB・I・G、JAY-Z、マイクタイソン、マイケル・ジョーダンなど世界の時代を創ったアーティストや著名人が生まれた土地です。そんなブルックリンよりもイカしているなんて最高ですね。

 

  • 下北沢をデータで読み解く

引用:google mapより

上記は「下北沢」と呼ばれている6商店街を含んだ地域※(2)を赤枠で囲った図になります。赤枠内は凡そ北沢地域が占めており、一部代沢(スターバックスコーヒー代沢5丁目店あたり)由縁別邸やボーナストラックの場所のみ代田地域となっております。

この地域の中にはカフェレストラン店舗が約630店舗以上、ファッション・雑貨店舗が230店舗以上、レコードショップ12店舗、ライブハウス17店舗、コンビニ・スーパー5店舗以上※1)が点在しており、店舗数や店舗密集度は「原宿」や「渋谷」を凌いでいます。※2021年6月筆者調べ 都心部と比較して地価が1/10程度であり、都内では店舗を借りることのできない経済力の個人経営者が、下北沢では小さな店構えでも出店することができるということが店舗の数を増やしている理由でしょう。店舗の詳細を見ていくと、更に面白いのが、ライブハウスやレコードショップがコンビニよりも多いという部分です。下北沢らしさを感じてたまりません。

また、近年ではレジャー関係の「謎解き」店舗が下北沢では増えています。例えば、リアル脱出ゲーム下北沢店を運営する㈱スクラップや謎解きカフェ、謎ベースの2店舗を下北沢で運営する㈱グリーンウィードなど、店舗型や街回遊型など事業形態はさまざまですが狭い商店に3施設が固まっています。もちろんレジャーとしてはその他、ダーツやビリヤード、ゲームセンター、定番のカラオケなどもあり、定番の遊び~すこし変わった遊び(謎解き)まで楽しめる状況になっています。

上記のように「定番の飯、大衆店~オリジナリティのある飯を提供する個店、飲み屋」・「誰しもが楽しめる遊び(レジャー)場~玄人好みの遊び(レジャー)場」が1.2㎢圏内の狭く小さな街の中に共存しているのが特徴と言えます。

 

●下北沢居住者と来街者の関係

下北沢は来街者で成り立っている街です。語弊があるかもしれないので補足しますと、北沢地域には9万世帯、15万4千人以上の居住者がおり、日々の生活を支えています。しかし、北沢地域は代田、梅丘、豪徳寺、代沢、池尻、羽根木、大原、北沢、松原、赤堤、桜上水などの10地区(地区により一部が北沢地域)から成り立っており、その広さは8.6㎢にまでなります。上記の定義では「下北沢の居住者」としては広すぎますので「居住者含めた下北沢=半径800m圏内かつ、なるべく隣駅とは被らない地域」としたとき、下記の表のような地域と居住者という結果となりました。

 


出典:世田谷区ホームページ令和3年(2021年)の世田谷区の町丁別人口と世帯数図1

https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/001/003/002/d00189572.html

 

小田急が発表している駅乗降者数(2019年度)を見ると、乗降者数は121,739人となっております。乗降者になるので、単純な「下北沢」に来街した人を表しているとは言いきれませんが、図1の下北沢圏内居住者2万8千人がすべて乗り込み、帰ってきたとしても乗降者は5万6千人、居住者以外におよそ7万人弱が1日平均で乗降している計算となります。(新型コロナウィルス感染前のデータになりますので前後はございます。)

もちろん、居住者すべてが小田急を使用しているわけがありませんので、あくまで仮定の中での計算となりますが、日々3万人5千人程度の来街者に支えられている地域であるといえるのではないでしょうか。

 

●徒歩圏内の狭い街に、大衆向け店舗から玄人好みまでが揃う「宝さがしのような」街

下北沢の中心である「北沢2丁目」には信号が3台(鎌倉通り沿い、下北沢成徳高等学校近くと、茶沢通り沿いに2台)しかありません。中心部は狭い路地が絡まり合い、街全体が歩行者天国のようになっており、その中に、ファッション雑貨店舗とレストランカフェが800店舗以上軒を連ねています。沢山の種類の店舗に支えられ、進化している下北沢はくさい言い方かもしれませんが「自分に合ったものを見つけ出すことができる街」とも言えるような気がします。

次回はそんな下北沢の街が「なぜ若者に愛されるのか」、来街する若者のインサイトを考察したいと思います。

 

 

 

 

【補足】

(1)タイムアウトとは、地域密着型のシティガイドでありながら、世界315都市58カ国、13言語(2021年3月時点)で展開するグローバルネットワークとグローバルなブランド認知を有する世界でもユニークなグローバルメディアブランドです。

https://www.timeout.jp/tokyo/ja/things-to-do/about-timeout-tokyo

(2)文頭 北沢2丁目を中心とした街並み(北沢2丁目・北沢3丁目・代沢5丁目)」を参照

【参考・引用文献】

1)I LOVE 下北沢 https://love-shimokitazawa.jp/archives/category/shop

2)小田急電鉄HP https://www.odakyu.jp/company/railroad/users/

3)世田谷区ホームページ令和3年(2021年)の世田谷区の町丁別人口と世帯

https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/001/003/002/d00189572.html

4)タイムアウト タイムアウトグローバルが選ぶ、世界のクールな地区10選

 https://www.timeout.jp/tokyo/ja/travel/coolest-neighbourhoods-in-the-world