未来の駅

【第9章】「LDKステーションと沿線多拠点生活」についての考察

生活者がリビング(L)、ダイニング(D)、キッチン(K)など、今までは自宅内に備えていた機能が駅へと外部化され、仕事とプライベートの両方において日常生活のさらなる充実を目指す次世代の駅サービスのコンセプト「LDKステーション」と生活者が鉄道沿線をテリトリーとして、目的に応じて過ごす駅(街)を選択する「沿線多拠点生活」について、文献レビューおよび有識者および将来におけるメインユーザーとなる大学生へのインタビューから、その受容性について考察しました。

 

 

  • 拡がる「シェア」「時長と時短の2極性」

そこから示唆されたことは、未来社会においては、身のまわりのあらゆるものがシェアされ、個人単位で物を所有することが非効率となる社会が到来するということです。そうなると「真に大切なものが何か」を考える生活者が増え、物質的な満足のみではなく、他者との直接的なコミュニケーションの価値が再認識されることとなります。

そして、高度デジタル社会では、必要な情報やもの・サービスを瞬時にそして最適に手に入れることができるため、時短意識がさらに高まる一方で、購買プロセス自体に価値を見出し、時間をかける時長意識も重視されるようになります。これらの事象が同時に進行する2極性は、ショッピングのみならず、人とのつながりや住居の選択や住み方、働き方など、ライフスタイル全般にまで広がっていくと考えられるでしょう。

 

  • 「LDKステーション」の受容性

住宅機能の外部化、シェア社会の到来、そして居住空間の充実化への意識が高まるとなると、「LDKステーション」のコンセプトは受容される可能性は高いと考えられます。

大学生へのインタビューからも、現在でもリビングとダイニングといった「空間共有」を若者はすでに許容しており、またLDKステーションに対しては、趣味を皆で楽しむ場所として、あるいは気心知れた友人同士での女子会などさまざまな用途を期待するポジティブな声が多く聞かれました。

ただしコミュニティへの関与意向は積極・非積極的といった二極の層に分かれており、開かれた場所へ積極的に関わる行動に対して不安を抱く若者も存在しました。そのため、自然と集まることができ、いかにも「交流しましょう!」といった圧力を感じさせないような工夫が求められます。

そのため、コミュニティの場には、「集まる目的」となり、場の安心感を醸成するための「集まる共通項」となる明確なコンセプトと、そこでの望ましい行動を促すポリシーを設定するといった適度なマネジメントが必要となります。これが達成できれば居心地の良い空気感や雰囲気を醸成することが可能となるのです。

一方で、企業が運営する施設は総じてありきたりとなりがちで、過剰に健全となり、その結果、魅力の乏しくなってしまう場合が多いため、地域の住民の参画や遊び心、一定の自由度を取り入れたマネジメントも必要だと考えられます。

 

 

  • 「沿線多拠点生活の受容性」

「沿線多拠点生活」の受容可能性も高いと言えます。デジタル社会がさらに進展することにより、一ヶ所での生活はむしろ非効率となり、多拠点での生活習慣が広がっていきます。

現在においても、今回インタビューさせていただいた佐別当氏の「Address」による定額での全国住み放題サービスが人気を博しています。

グループインタビューより若者は、新たなコミュニティづくりのきっかけや、時間や場所の制約からの解放について魅力を感じていることが読み取れました。

そもそも人がわざわざ特定の場所に訪れるには明確な理由が存在します。それは、自然や文化などのエリアが内在する魅力と他者との直接的な会合が主な理由となります。そのため、それぞれの駅や地域ごとのコミュニティと地域外の人をつなぐ機能が望まれます。とくに郊外の駅では、自然発生的に交流は起こりにくいため、外部の専門家の協力を契機として、次の世代を担う人材やコミュニティを創り出していくことも必要となるでしょう。

 

以上、「LDKステーションと沿線多拠点生活」に関する受容性について考察してきました。

次章では、これらを踏まえ、「LDKステーションと沿線多拠点生活」が未来の生活者へ提供する新しい価値とは何かを紹介します。

 

※本研究は、日本大学法学部臼井哲也教授との共同研究となります。

※日経広告研究所報310・311号に論文が掲載されています。