ゆるさとLabo

【第1章】関係人口とはどんな存在なのか?

みなさま、こんにちは。ゆるさとLabo研究員の上田です。今回は、私たちの研究の題材である「関係人口」について、その詳細と、私たちの考える問題意識についてご紹介していきたいと思います。

 

●地域へ向かう「関係人口」の登場

近年、地方に目を向ける若者が増加していると言われています。

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局による2020年度のアンケート調査からは、

東京圏在住の約半数が、地方圏での暮らしに関心があり、さらに全体的に若者(20代~30代)の方が、より具体的に検討していて関心が高いという結果が報告されています。

 

 

出典:内閣官房「移住等の増加に向けた広報戦略の立案・実施のための調査事業報告書」, https://www.chisou.go.jp/sousei/pdf/ijuu_chousa_houkokusho_0515.pdf , (2021/4/8アクセス)より筆者作成。

 

こういった状況の中で、2018年頃から、地域移住という形ではなく、定期的に訪問し地域に「関わっている」という「関係人口」の存在も注目されてきました。総務省の定義によれば、「関係人口」とは、

 

移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指します。

出典:総務省「地域への新しい入口『関係人口』ポータルサイト」, https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou, (2021/3/31アクセス)より

 

と示されています。

 

「関係人口」という考え方により、地域活性化が「地域同士の移住者の奪い合い」ではなく、より広い間口・多様なスタイルの地域活性の方法が示唆され、まさに「地域課題解決の担い手」として注目されるようになります。総務省は関係人口の紹介文に以下のように続けています。

 

地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。

出典:総務省「地域への新しい入口『関係人口』ポータルサイト」, https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou,(2021/3/31アクセス)より

 

この考えをベースとして、総務省は、平成30年度より『「関係人口」創出事業』を実施し、各地域でモデルケースとなる事業が現在も展開されています。

 

●待つのではなく、関係を育てていくことが必要なのでは

一方で、その存在と活動の多様性故に「関係人口」という存在が曖昧なイメージになってしまい、地域と若者の関係を育て損ねてしまう可能性もあるのではないかと考えています。

地域から見れば、関係人口は「外部から来てくれて、その地域を盛り上げてくれる人」であり、まさにヒーローのような存在です。前述の『「関係人口」創出事業』では、地域外からやってきた人々に、地域の魅力を再発見してもらったり、特産物の付加価値を高めてもらったり、未来のまちづくりを描いてもらう等、濃密なプログラムが設計、実行されている様子が伺えます。

私たちは、そのようなプログラムを通して、「なぜ地域外から若者はその地域を選び、やってきて、活動をしているのか」という動機とニーズをきちんと把握して、それを叶えていくことが重要だと思っています。地域は、偶然現れるヒーローを待ち望むのではなく、地域に目を向ける若者の欲求に応える準備をして、やってきた若者と関係性を築き、育てていくことができるのではないでしょうか。

 

次回からは、そんな関係人口となった若者の動機や欲求を明らかにしていくゆるさとLaboの研究についてご紹介していきます。

ご期待ください!

 

 

※この研究は、日本マーケティング学会主催「マーケティングカンファレンス2020」のポスターセッションにおいて、「ベストポスター賞」に選出されました。